季節労働する象と、追い払われる鳥

誰にも信じて貰えないかもしれないし、そもそも誰かに信じて貰う必要があるのかもわかりませんが、一応毎日何かしら仕事的なものをしている私です。本当です。嘘じゃないです。

お仕事というものは、収入源となる見栄えのする何かを実行するまでに、恐ろしく地味で、それをやっただけでは一文にもならない数多の雑用があります。自営業の大変なところは、そんな一文にもならないけどやらないわけにはいかない雑用に追われていると、本当に一文も入ってこないところ、だったりします。なんだかんだ言って日給が保証されているサラリーマン(給料を貰う人の意。アルバイトも派遣社員も社員もサラリーマン)の収入保障のなんと手厚い事か!

そういえば、南国のどこかに生息する「人に雇用される象」の話を昔テレビで見ました。その象達たちは、普段は森林域で野生の象として暮らしているのですが、毎年畑を耕す時期になると人里に訪れ馬耕ならぬ象耕の労働力として一時的に人間の家畜となり、サラリーとして給餌を受け、耕起作業が終わると森に帰っていくのだそうです。この象の話を知った時、「雇用」のルーツをみたようで、ちょっと感動した記憶があります。(因みに虚覚えですが、確かこの本にも、チラッとこの話が載っていたはず…。面白い本なので、象の話に興味がなくても読んでみてください!)

また、最近、近所でこんな声を聴く事が増えました。

この美しくもけたたましい鳴き声の正体は、その名もずばり!

「ガビチョウ」。

クレオパトラのごとき高貴なアイランが特徴の鳥で、その本来の生息地は中国南部や東南アジア。日本に入ってきたのは1970年と比較的最近です。
東南アジアでは鳴き合わせを楽しむ愛玩鳥としてポピュラーな鳥であり、安価に入手できたため、愛玩鳥ブームにあやかろうとした日本のペット業者が大量に仕入れていたものの、売れずに大量に遺棄(放鳥)した結果、野生化したのだとか。
現在日本では特定外来生物に指定されているのですが、収益になりそうだからと大量に飼育しておきながら目論見が外れたと言って遺棄し、おまけに外来種として駆除しようとするなんて、被雇用者を大量雇用しておきながら状況が変わったとか言って採用取り消しや大量解雇をし、かつ解雇された元従業員が企業組織に就職する以外の生き方を確立するやいなや真っ当な生き方じゃないだのなんだのと苦言を呈するような、ブラック企業大賞もびっくりのブラックぶりです!(…ちょっと極端な例えをしました。自覚はあります。すみません。)

それにしても、南国の象とガビチョウ各々の人との関わり方は対局にあるように思います。それは、各々の生き物と人との関わり方が、対等なものなのか非対等なものかという違いによるのかもしれません。
遥か昔、動物がその生涯の殺生与奪の権を人間に握られたことによって、人間との対等な関係が崩れ、家畜という概念が誕生しました。
ブラック企業という概念が生まれたのもまた、雇用者と被雇用者との対等な関係が崩れたことによるのではないでしょうか。
そして対等な関係が崩れた原因は、家畜化されその一生涯を人から給餌を受けることで過ごす動物の多くが、採食という行動を忘れ人間からの給餌なしでは生きることができなくなったのと同様、会社にいるだけで給料を貰えるのが当たり前の時代が続いたがために、多くの社会人が金銭を得られるその理由を見失い、生き方が本来多様であるということを忘れたせいでもあったのかもしれません。

私もすっかり野生での生き方を忘れてしまった生き物です。なのでこの先、上手く生き抜いていけるのか、社会という私自身を取り巻く大きな存在に特定外来種よろしく鼻つまみ者として扱われないか心配なのですが、南国の象のように逞しく、相手と対等な関係を築きながら、自由で不自由なこの社会で、自分なりに生きる方法を確立したいと思う今日この頃です。

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